目次
はじめに
みなさんは住宅の色彩・素材計画という概念をご存知ですか。
住まいの空間は、基本的に、床、壁、そして天井で構成されています。
視覚的に調和がとれているインテリアは、中で生活する人に居心地の良い快適な気分をもたらしてくれるものです。
ヨーロッパの住居の多くがすっきりと統一感にあふれた様相をしているのは、空間構成基本要素の床、壁、天井、に加え、家具を含めた部屋全体、もしくは家全体の色彩・素材計画が、家・空間づくりの最初の段階で行われているからです。
今日は、色彩・素材計画を取り入れながらどのように新しい住居の間取りを考えていけばいいのか、一緒に見ていきましょう。
インテリアスタイルとの関連性
以前、新しい居住空間をつくる際にどのようなインテリアスタイルにするかをイメージすることの重要性をお話しました。
ご自分のイメージや好みに照らし合わせて選択したひとつのインテリアスタイルをどの空間にも対応させるのが一番簡単なのですが、複数の家族構成になると、個人の希望も異なりなかなか難しいのが現状です。
住居空間は、『共通スペース』と『個人スペース』で構成されています。
『共通スペース』はその家が存在し続ける限り基本的には形状の変わらないスペース、また『個人スペース』は時間や家族構成の変化に対応できるフレキシブルに変化が可能なスペースです。
家族ひとりひとりのインテリアスタイルの希望は、それぞれの個人スペースに取り入れ、家の雰囲気を決定づける『共通スペース』は全て同じインテリアスタイルにし、色彩・素材計画もそれに準じたプランが好ましいです。
ここで、「都会的な雰囲気を醸し出すスタイリッシュ・スタイル」を選択した場合を例にとってみましょう。
このスタイルは、モノトーンをベースとし、無機質な金属やガラスなどの素材を組み合わせ、クールで洗練された佇まいを表現します。
モノトーンが基調色なので、白色、グレー、黒色を床・壁・天井に取り入れ、同時に配置する家具の材質や色も同じトーンで構成することがポイントです。
日本の住居にありがちなのは、間取りを考える際には、床・壁・天井の素材や色をあるスタイルに統一しているのにもかかわらず、家ができた後に設置する家具がその空間に見合っていないものが多く、結果的に統一感の薄い落ち着かない空間に仕上がってしまうケースがよく見られます。
空間を構成するのは、床・壁・天井、そして家具です。
インテリアスタイルは決まっていないけれど、新居に配置したいお気に入りの家具は決まっている場合もあるでしょう。
その場合は、その家具の色や材質を基本とし、そこからにインテリアスタイルを決定していくことをおすすめします。
色の性質
個人によって居心地の良い空間の定義は変わります。
ヨーロッパの新しい家づくりの際によくあるのが、
- 自分は青色が好きなので、青い空間をベースにした家にしたい。
- オレンジ色は自分の気持ちを高めてくれるので、キッチンをオレンジ色で構成したい。
などの色を起点とした空間づくりです。
人間の心理的な観点からみると、部屋の佇まいや雰囲気は、使われている色に左右されることが多く、その色が自分の好みのもの、自分に元気を与えてくれたり落ち着かせてくれたりするものであれば、その空間は実に居心地の良いものになるのです。
ひとつの色を基本とした空間構成はもちろん、選択したインテリアスタイルの中にアクセントとして自分の好きな色を入れた空間構成も間取りを考える上で、とても重要な鍵となります。
それぞれの色には、その色が空間に与える効果や使い方が異なります。
ここで、色の性質を見てみましょう。
『赤色』
太陽や火の熱く活発なイメージ、アクティブな気分、食欲を増進させる、目を引き関心を集める
→アクセントカラーとして使用→キッチン、プレイルーム(子供部屋)
『オレンジ』
食欲を増進させる、賑やかさ、陽気さ、緊張を和らげる
→キッチン、リビング
『茶色』
安定、緊張を緩和、温もり、伝統や歴史を感じさせる
→床、家具
『黄色』
気分が明るくなる、集中力や記憶力を高める、知性を活性化する
→アクセントカラーとして使用→トイレ、バスルーム、プレイルーム(子供部屋)
『緑色』
ストレスの軽減、穏やかな気持ちを与える、リラックス
→キッチン、リビング、バスルーム
『青色』
集中力を高める、食欲をコントロールする、睡眠を促進、時間経過を遅く感じさせる
→寝室、書斎、仕事部屋、バスルーム
『紫色』
想像力をかき立てる、緊張や不安を癒す、心身の回復
→アクセントカラーとして使用→書斎、仕事部屋、寝室
『グレー』
穏やか、控えめ、落ち着き、調和
→どんな色とも合わせやすい→どの空間にも使える→床・壁・天井・家具
『白色』
清潔な印象を与える、広さを感じさせる、気分を一新する、実際よりものを軽く感じさせる
→空間を広く見せる→どの空間にも使える→床・壁・天井・家具
『黒色』
圧迫感や閉鎖感を高める、自己主張、高級感、重厚感を与える、実際よりもものを重く感じさせる
→アクセントカラーとして使用→床・壁・家具
赤色やオレンジ等の暖色系をとりいれた空間は、体温や気持ちを高める晴れやかな空間をつくりあげ、青色や濃い緑色などの寒色を主としたインテリアは心身を鎮静させたリラックス感を促すのに最適です。また薄い緑色や薄い紫色などの中性色は体温や血圧を平常にもどし、バランスをとる作用があります。
色のもつ効果や性質を念頭に置きながら、自分の好みの色を空間づくりに取り入れることが大事です。
素材の性質
色彩と同様、空間の雰囲気を左右させられるのが使用する素材のもつ性質です。
それぞれの素材が持つ性質で空間への使い方や機能も異なりますが、ここでは、床・壁・天井への使用に関して、視覚面からの素材の性質についてお話します。
『クロス(壁紙)』
日本の一般的な住居空間で、最も使用されているのがこのクロス(壁紙)です。素材もビニール、紙、織物などがあります。
表面の加工具合や色のバリエーションなど沢山のタイプがあり、選択次第で空間の雰囲気が変わります。
ヨーロッパでは、織物クロスが一時期とても流行ました。
最近では、紙クロスは使われるケースはありますが、あまり主流ではありません。
『塗り壁』
伝統的な左官塗りの工法である塗り壁は、日本の風土や気候に適している壁材です。
ヨーロッパでもこの塗り壁が主流です。
上記のクロス異なり仕上がりに継ぎ目がないことが特徴。漆喰やプラスター(石膏などの鉱物質の粉末を混ぜたもの)、土壁、珪藻土など、使用する材料や工法によって風合いは変わります。
また、刷毛やコテ、ローラーなどで表面のさまざまな表情をつくりあげることも可能です。
純白の仕上がりが特徴の石膏プラスターはヨーロッパの家庭の壁・天井材の主流です。
『木』
壁・床・天井に使える木材ですが、一概に「木材」と言っても、濃く暗い茶色が特徴のウォールナット材、少しグレーがかったマットな様相のオーク材、暗い赤いトーンを持つマホガニー材など、それぞれの木には異なる表情と色があります。
「木のぬくもりを感じさせる北欧ナチュラル・スタイル」や「自然素材を使った素朴で温かみのあるカントリー・スタイル」を基本としたインテリアスタイルには欠かせないこの材質ですが、使う木の視覚的な特徴や触感を把握することが大切です。
その他のインテリアスタイルにおいても、木質系の壁材を一つの面に使ったり、一面全部でなくとも腰壁として別の壁材と組み合わせて用いて部屋のアクセントとしたり、と様々な提案ができる素材です。
『タイル』
耐水性や耐久性に優れているタイルは、主に水回り空間に使用されてきました。
ヨーロッパの住居では、大理石と並んで床材に最も使われる材料です。
大きさ、形状、色など、デザインバリエーションが豊富なのも特徴です。
複数のタイルを組み合わせて一面を形成したり、別の壁材とこのタイルを組み合わせてオリジナルな様相の壁を作ったりと、タイルの上手な使い方によっていろいろな空間の構成が可能です。
『大理石』
日本の住宅ではあまり使用されませんが、ヨーロッパの住居構成に欠かせないのが、この大理石です。
高級感を醸し出す天然の大理石は硬質なので、傷や汚れが付きにくいので住居には最適な素材です。
この大理石にも豊富な色バリエーションがあります。
大理石は『重厚感に溢れる、洗練されている』イメージがありますが、同時に大理石の持つ、『冷たい』というイメージも付いて廻ります。
これを払拭するのに、大理石を使った床にはラグ(敷物)と組み合わせて、オリジナルな雰囲気を作りだすといった方法がよくとられます。
『レンガやその他の石材』
ヨーロッパでは、外装だけではなく内装にもよく使われるのがレンガその他の石材です。
主に壁や床に使用されます。 各石材の様相の違いや、ひとつひとつの大きさや積み方によって雰囲気が変わるのも特徴です。
色のバリエーションは他の素材に比べて少なくなりますが、石の持つ重厚感や温かみなどの温度感を空間に反映できる素材です。
『樹脂』
耐衝撃性や防滑性などの様々な特徴を備えている樹脂床は、ショップやレストラン、工場などの施設に使われてきた床材ですが、近年、ヨーロッパの住居に用いられるケースが増えてきています。
色そのものバリエーションや色彩トーンの豊富さ、また各々の樹脂の持つ特徴に合わせ、オリジナルな空間を構成できるのが人気です。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
色、素材選びは、家の間取りを考える上で大変重要なポイントです。
それぞれの色や素材のもつ性質を把握すること、そしてその上手な選択は家の雰囲気を決定づけるものです。
お好みのインテリアスタイルを見極め、同時にそれに見合う色や素材をセレクトし、間取りを通して暮らし方を考える、というヨーロッパの空間づくりのプロセスは、日本の住居空間づくりにも活用できるのではないでしはずです。
頑張ってみてください。
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